花子さん、おばあさんになる

人間年齢100歳の老いねこ日記

復活の日

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 (前回のつづき)

 退院して真っ先に行きたかったのは皮膚科だ。入院前から右の人差し指が赤く炎症を起こしていて、それが悪化していた。指の関節が曲がる病気「へバーデン結節」の初期症状をこじらせてなった。なんだかかっこいい名前だけどうれしくない。

 6月に肩と腕が痛くて近所の整形外科へ行った。五十肩だろうと言われ、指先も痛いと訴えたら「指は別の病気」と言われた。母も同じ症状で指が変形している。体質が同じらしい。わたしはまだ曲がっていないけど、なんとか避けられないものか。ひとまずはこの炎症を治したい。かかりつけの皮膚科はいつも3時間待ちなので、とりあえず近所の泌尿器科兼皮膚科へ行った。

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 すると、「ポスターカラーか?」というような鮮やかな紫色の塗り薬を処方された。「服に付くと色が落ちないから気をつけて」とのこと。なんだか恐ろしい薬だな。帰りにスーパーに寄ったら、おつとめ品コーナーに、熟したあんずが並んでいたので買ってジャムをつくった。おお、上手に出来た。うれしい。日常生活を楽しんでぐっすり寝た。

 翌朝、起きてびっくり。顔が赤くむくんでいる。

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そればかりか、よく見たら身体に赤い発疹が...

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 あの紫の薬の呪い?まさかね。

しかし、参ったなー。かかりつけの皮膚科は休診日だし...

手術した病院へ電話する。「今日来られるようでしたら診ますよ」というので、よたよたと電車に乗って向かった。

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 主治医のT先生ではなくて、若い先生の部屋に通された。昔、ジャニーズだったような雰囲気。喋ろうとすると咳こむ。声を絞り出してやっと説明した。「とりあえず、痛み止めと咳止めの薬をやめて、明日かかりつけの皮膚科の先生に診てもらってね」とにっこり言われて帰る。そんなのさっきの電話で言ってくれ...と思わずにはいられなかった。

 翌日、いつもの皮膚科へ行き、3時間待って診てもらった。先生が「おお、手術どうだった?ん?ああ、こりゃ薬疹だ。何飲んだ?どっちかというと痛み止めの薬があやしいな」その場で錠剤1錠と水をもらって飲んだ。「5日分出すから、それ飲めば治るよ」「ありがとうございます。先生、あと...指の炎症で、近所のお医者さんにこんな紫の薬もらったんですけど...」「なんだこりゃ。まだこんな薬出してるとこあるんだ?」「はあ...」「違うの出す?」「おねがいします」

 看護師さんがくすりを2種類塗ってくれて、ガーゼの上から包帯をぐるぐる巻いた。「え?なんだかずいぶん大げさだな...」

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 翌日、胃が痛くなり、市販のガスター10を飲んだ。いつもなら、飲めばすぐ痛みは引くのに、なかなか良くならない。次の日も胃が痛い。ガスター10は8時間あいだを空けて服用しなくちゃならない。8時間我慢するのがしんどい。ううう。

 胃は痛いし、咳き込む。傷も痛むし、手術の影響で胸の奥に板が一枚入ってるような違和感。そこへ来て、五十肩、指はぐるぐる包帯巻き。さらに追い打ちをかけるような猛暑日。もう寝ていられない。取り寄せた安いマヌカハニーをなめる。その一瞬だけ胃の痛みが薄らぐ。しかし、また胃が痛い。水を飲む。一瞬おさまる。またすぐに胃が痛む。暑い。しんどい。暑い。しんどい。夜が長い!!

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  そんなことを3日間ぐらい繰り返し、術後の診察、外来予約日が来た。無事行かれるだろうか...。ほとんど何も食べられず、お腹がぺったんこだ。日傘を握りしめて出かけた。

 T先生の診察室の表示は「混雑中」2時間待ってやっと呼ばれる。傷口より何より「胃が痛いのが一番しんどい」と訴える。先生が「皮膚科で処方された薬で胃をやられたんでしょう。もっと強い胃薬出しましょう」とタケキャブを処方してくれた。「先生、わたし、入院してたときのほうが元気でした」と言ったら、先生は困ったようにクスッと笑った。

 その後もタケキャブを飲んでるのに、症状がちっとも改善しない。

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 なんとか仕事部屋へ行くが、西日の当たる部屋は夕方になるにつれ、ますます暑さが増していく。今年の暑さは耐えられない...。みんなもそうだろうけど。

 

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 電話に出ると咳き込む。声がちゃんと出ない。自分の名前も何言ってるかわからない。椅子に座っているのがつらくて床に横たわる。気づくと寝ている。ダメだ仕事にならない。帰ろう。

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 家へ帰る。バタリと寝てしまう。お粥を食べる。胃がしんどい。痛いのが治らない。また横になる。起き上がっている時間は何時間もない。

 何日も続くので、近所のいつものクリニックへ行く。また胃カメラを飲むことになった。3ヶ月のあいだに2回も胃カメラとは...。

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 麻酔が効いて、またゴーゴー寝てしまった。しかし、いつもと違うのはお腹が痛くて自発的に目が覚めたことだ。いててて。看護師さんを呼んで「お、お腹が痛いです...」と訴える。トイレに行くよう言われて行くがなにも出ない。いててて。

 とりあえずそのまま、先生の診察へ。「胃はとてもきれい!だから薬は出せないね」「はあ...でも、じゃあなんで痛いの治らないんでしょう」「うーん...」「というか、先生なんだかお腹が痛くて...」「う〜ん...」

 もう、なにがなんだかわからん。。

 とにかく、お粥生活だ。柔らかいものだけ食べて養生だ。力が出ないけど仕方ない。

 そんなこんなで7月は終わっていった。

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 8月。よっこいしょと気合を入れたら、なんとか動けるようになってきた。ごはんもだんだん普通のものが食べられるように。咳も減ってきた。ああ、復活?やっと復活できた?

 はあ〜ご心配をおかけしましたが、もう大丈夫そうです。お見舞いの品や言葉をくださったみなさんありがとうございます。支えになりました。しかし、これっぽっちの手術でこんなヘロヘロになって、この先どうするんだ。鍛えないとなー。

 

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 と、言って終わりたかったのに、五十肩が悪化してきて、夜痛くて寝てられません。痛み改善の運動はしているけど...。半年から1年すれば治るよって言われましたが、そ、そんなにこの痛みは続くのでしょうか?

 ううう。完全復活の日はいつになるのだろう。のんびり行きますわー。

 こんな長い愚痴にお付き合いくださって、どうもありがとうございました! 

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おわり

 

 

病院の生活

前回のつづき

  手術2日前の入院。検査や手術の説明を聞く以外は特にすることがない。入院生活はヒマだろうと予想し、モバイルWi-Fiを契約してMacBookを持ち込んだ。久々にブログを更新したり、仕事のメールを送ったり結構やることはある。この時点ではまだ患者の意識ゼロ。それに、手術は初めてではないのでそれほど緊張感はない。レンタルパジャマの上は、はだけて胸が丸見えなのでTシャツのまま過ごす。

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 ここの病院は個室料金が安くて7000円ちょっと。保険で1日5000円出るから、個室にしちゃおう!と思ったら空きがなくて、4人部屋になった。患者の年齢層は高め。洗面所でおじいさんに「あんた若いのに気の毒にねえ」と声かけられた。

  病室では70歳と78歳のマダムと同室。普段なら、おばさまと喋るのは得意分野なのだけど、78歳のおばはんが、看護師さんたちに「いくつ?彼氏は?結婚は?」と大声で質問しているのが嫌でも聞こえてきて、こりゃ隙を見せたら面倒だとおもい会釈だけしておいた。 

 お楽しみは夕食前のNHK朝ドラ「カーネション」の再放送。イヤホンをして寝転がって見ようとおもったら短くて出来ない。ラジオ用を持ってきてしまった...。

 

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 隣のマダムの咳が一晩中続いていた。耳栓をしても気になる。熟睡できない。そこにきて朝5時、ブラインドをガーッと開けて、78歳と70歳が大声でおしゃべりを始めた。孫は何人いて何してるとか...。ええ〜、6時起床なのに早過ぎじゃろ〜〜。個室、個室。。個室は空かんか?

 

 手術当日は、朝ごはん抜きだからすることがなくてヒマだ。朝6時からワイドショーをつけてるから、同じ話題ばかり見ている。歌丸さんの訃報は入院した日に、ヤフーニュースの速報で知った。もしかしたら、今わたしのいる病院から旅立ったかもしれないという噂がある。ま、怪しいけれど、それならそれでなんとなく感慨深い。

 

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 時間になったので、手術着をひらひらさせながら眺めのいい渡り廊下を渡り、手術室へ向かった。リラクゼーション音楽がうすーく流れている。背中を丸めて麻酔をされる。次にマスクする。そして、わたしの記憶はすっかり飛び、目が覚めたらICUにいた。第一声は「暑い」とにかく暑かった。痛いは次。

 

 

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 手術は内視鏡だけで出来たと聞きホッとする。ただ、5時間もかかったという。先生たちも大変だが、待機していた両親も疲れたことだろう。ありがたや〜。ま、そんな殊勝なきもちでいられたのも目が覚めた直後だけで、そのあとは、あ〜も〜いやだ〜この状態から助け出してくれ〜生き地獄だあ〜ときもちが暴れた。

  わたしのベッドからは壁かけ時計が見える。両親が帰ったのが夕方前。なのに、いつまでたっても時計の針は夕方を指している。痛い。ヒマ。痛い。ヒマ。痛い。ヒマ。傷もズキズキするけれど、この状態で意識があることがつらい。睡眠薬で眠らせてほしい。

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 ちっとも進まない時計を見て、どうしたらこの超退屈な時間をやりすごせるだろう...と考えた。頭しか自由ではないのだから、ここは「妄想」をするしかないだろう。ということで、あれやこれや想像した。まず、ここを出て一般病棟に移ってのびのびするわたし。退院して友だちとわいわい遊んでるわたし。もっと先のむふふな人生。そんなことを考えながら、眠ったり起きたりしていた。

 すると、看護師さんたちの会話が耳に入ってきた。「え?これシモダアユミさんの?」「あ!そうだ...」「わ...。でも、奇跡的に」「うん、奇跡的に」「あ〜、奇跡だね」「うん」。え〜!何何?何をうっかりしてたのよ看護師さん!聞きたいけど、意識がもうろうとして聞けない。奇跡が起きて大丈夫だったんだから、まあ良しとするけど...。

 

 救急車のサイレンの音がして目を開ける。時計を見ると夜10時過ぎ。腰が痛くてちょっと浮かせて位置を変える。しかし、腰よりも背中が妙に痛い。なんとなく不安で、はじめてナースコールのボタンを押した。背中のチューブを見た看護師さんが「あら!血!何か漏れ出てるわ。先生に診てもらいましょう」と言う。ところが「霜田さん、ごめんね。急患で先生たちみんないないので待っててね」。背中をまくらで浮かせた姿勢で待たされ、そのまま寝てしまった。先生がきて「どれどれ」と診てくれたのは夜中の2時近く。え〜、ずいぶんほっとかれたなあ。すると「もぞもぞ動いて液が漏れただけだから、カットバン貼っておいて」と指示して先生は消えた。

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  翌朝、「朝食です!」とベッドの角度を変えられて起き上がる。イテテテテテ。朝ごはん?この状態で?テーブルの上に白い朝食が並ぶ。冷奴、お粥、ヨーグルト。看護師さんが「お豆腐に醤油かけますか?」と聞く。醤油をかけてもらっても食べられる自信がない。「みなさん、こんな状態でも食べるんですかねえ」「完食するひと、見るのも嫌ってひと、色々ですね」「はあ。ヨーグルトだけ食べようかな...。あの...スプーンを...」。ここは醤油の気遣いよりスプーンでしょ、スプーン。

  そして、朝ごはんのあとしばらくして、ICUから病室に移った。「車椅子に乗れますか?」と聞かれ「無理な気がします」と答えたので、ベッドからベッドに移されてガラガラと運ばれた。「個室が空いたので個室ですよ〜」と聞き、段差でガタン!となる振動すらうれしかった。

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    お昼ごはんは自力で食べられず、母に食べさせてもらったけれど、早くいろんな管から解放されたい!その一心で、ベッドを直角に起こして自力で晩ごはんを食べた。

 管がぜんぶ取れて、自由に売店に行かれるようになると、どんどん回復していった。めずらしいお菓子やアイスを買いに、週刊誌を立ち読みしに、売店へ行くのだけが楽しみであり、運動であった。  もうイヤホンなしでテレビを見られるし、アマゾンプライムで映画も見られるし音楽も聴ける。自分専用の冷蔵庫と洗面所もある。地獄から一気に極楽へ来た。うれしいうれしい。

 しかし、テレビを見ると、オウム事件の死刑執行、西日本の豪雨被害と、日本はずっしり重い空気に包まれていた。そんなこともあって、テレビは消していることが多かったが、明け方に目が覚めてしまい、なんとなく電源を入れたらサッカーW杯をやっていた。ぼんやり眺めているとPK戦になって興奮した。あれ、どことどこの国の対戦だったけな。興奮したわりに覚えていない。

 

 そんなこんなで10日間と言われていた入院生活も8日目に退院することが出来た。予定より早まって良かった。とは言っても、まだ傷は痛い。重たいカバンを持つのは無理があったので母に持ってもらい電車で帰ろうとしたら、クレーム発生。「腰が痛くて持てないわよ!」。タクシーで帰った。

 

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 久々の我が家では猫が喜んで迎えてくれた、なんてことはなくて完全無視。性格は熟知しているけれど、つくづく薄情なやつだ。ベランダの植物たちに水をやり、溜まってたあれこれを片付けて、これでやっといつもの日常生活だ〜!

...と、喜んだのもつかの間。絶不調生活はその先にあった。

 

つづく

 

 

 

  

はじまりはネコの日

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  7月の絶不調のすべてはニャンニャンニャンの猫の日、2月22日に受けた人間ドックから始まっていた。横浜市の特定健診は毎年受けていたけど、それにはレントゲンや胃のバリウム検査は付いてない。胃の調子がわるいときは近所のクリニックで胃カメラの検査をしていた。

 わたしが加入している文芸美術国民健康保険組合では、人間ドックの補助をしてくれている。ベーシックなタイプなら全額負担してくれるという。ラッキー!早速電話。ところが、加入1年未満では受けられなかった。翌年、受けようとしていたのにウッカリ申し込み時期を逃した。で、3年目の今年受けたのである。

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  氷雨降る中、指定の健診センターへ行く。血圧は相変わらず低く、視力がだいぶ落ちていた。胃のバリウム検査へ進む。胃を膨らます発泡剤の錠剤を渡され、コーヒーミルクくらいしかない少量のバリウムで飲むように言われる。

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 こんな大きいの飲めるかな?と不安におもったら、案の定飲み込めず食道でひっかかった。そこでシュワシュワと発砲しだした。ふがふがしているとスタッフの若い女性が「吐き出しますか?」と言う。こんなとこにひっかかってるものをどうやって吐き出すのだ...。すると、レントゲン技師の男性が「どうしたの、なにやってるの」と出てきた。「こちらの方が...」「ああ、いい、いい。もうこっち来て。バリウム飲んで」コップいっぱいのバリウムを飲んだ。でも、なんだか食道にひっかかりを感じる。訴えるヒマもなく、指示されるがまま動く。

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  終わるとすぐに、胸部レントゲンへ行かされた。すべて完了。下剤を渡されて帰る。

 

 2週間程度で、結果が送られて来た。

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 要検査がふたつあって、食道に何かある、縦隔に影があると書いてある。「あれだ、発泡剤!食道にひっかかってたんだ〜」とおもった。友だちも「あそこの人間ドックは基準が厳しめだよ」と言っていたし、まあ気にするほどじゃないな、というか、今それどころじゃない。来月の個展の絵が全然出来てない!今、再検査なんかして食道ガンなんか見つかった日にゃ大変だ。個展が終わったら検査に行こ〜。

 そして、バタバタと個展は終わった。終わったら次は溜った仕事をやっつけなければならなかった。で、近所のクリニックに検査結果を持って行ったのはゴールデンウィーク直前。胸部CT検査は大きな病院へ行かねばならないのでGW明けを予約。28日に胃カメラを飲んだ。

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 麻酔がよく効き2時間くらい寝て起こされる。寝ぼけまなこで先生の話を聞く。「ポリープが2個あったので取っておきました。簡単な手術に相当するので保険に入っていたら対象になりますよ。書類持って来たら書きますからね」「はあ」

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 お会計で一万九千円くらいの金額を言われて呆然。「すみません、そんなにお金持って来てなくて、家に取りに行っていいですか」「霜田さんは検査結果を聞きにまたいらっしゃるから、そのときでもいいですよ」いやはや恥ずかしい。

 2時間も寝たというのに家に帰ってまた爆睡した。

 ゴールデンウィークには左手がけんしょう炎になり、湿布をぐるぐる巻いて過ごした。なんだか体が弱っている気がする。

 

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 そして、GW明けに市民病院でCTを撮った。その結果を持って近所のクリニックへ行く。先生がいつもより真剣に「ああ、これは、大きいな。悪いものじゃないけど、縦隔腫瘍というか、気管支にのう胞があるね。手術したほうがいいかな」「へ?手術」「自覚症状は?」「大きな錠剤とか、たまに食事が飲み込みづらくなってましたけど」「どれどれ、と胃カメラの検査結果をまた見る。ああ、ちょっと押されて細くなってるところあるねえ」「はあ」「呼吸器専門の病院の先生を紹介しよう」「はあ」。なんだか狐につままれた気分でいると、先生が電話をかけて交渉してくれている。それはいいのだが、このクリニックはカーテン一枚隔てたところの中待合室に3、4人入れるから、個人情報ダダ漏れなのだ。

 

 

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   ずいぶん時間がかかったうえに、みなさんにすべての情報がつつぬけなので、出て来たときの視線がなんとも...。紹介状を書いてもらって帰る。

 

 翌週の月曜の朝8時半くらいに病院へ行く。1時間くらい待って呼ばれる。T先生ってどんな先生かな...と入って行くと、

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 嶋田久作に似ていた。感じはわるくない。造影剤入りのCT検査や色々やってみないとはっきりとは言えないけど、内視鏡で出来るでしょう。ただ、色々癒着しているので、動脈から出ている細い血管も引き抜いてしまったら、開胸手術になりますねと言う。「開胸...」おおごとだな。。マイッタなあとおもいながら、手術をすることにした。先生の首にぶら下がってるカードの写真がとても若くて人相が違う。こんなにかわいい顔がずいぶん渋くなっているんだから、まあ大丈夫だろうとおもった。

 そうして約1ヶ月後の、7月2日に入院したのだった。

つづく

 

ヤンさんのこと

 

 2018年も後半がはじまってしまった。今年に入ってから、このブログを更新したのは今日で5回目。3月いっぱいは、個展にあわせてつくった本「横浜のわたし」の文章を書くことにエネルギーを使いすぎてヘトヘト、おばあさん猫はほったらかしでした。しかし、個展にお客さんはたくさん来てくださったし、本は300部完売したので、わたしも花子も報われたような気がしています。有難い。

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 さて今日は、その個展でのエピソードをひとつご披露したいとおもいます。というか自慢したい!何度も聞かされているひとは、この先はスルーしてくださいな。

 

 日曜日の午後、ふらりと入ってきた男のひとがいました。「ポスターを見て入ってきてくれたんですか?」と声をかけると「ア、ニホンゴ、ダメ...」と首を振ります。「あら、観光?」「ハイ、カンコク」「ん?韓国?」観光かどうかはわからないけど、韓国から来たのね。

 「学生さん?」と聞いてみる。「プッ!ヨンジュウサンサイ」とウケている。「43歳?あら、結構いってる。お仕事は?」「シゴト、ナイ」と笑う。「無職?韓国に帰ればあるんでしょ?」とたずねると「ん〜、ナイ、カナ...」「ないの?お仕事なにしてるの?」とズケズケ聞くわたし。「ん〜カントク」と恥ずかしそうに言う。「うん、カンコクだよね、オシゴトは?」もう一度恥ずかしそうに「監督...」と言う。

 驚いた。「え?なんの?」「エイガ」「映画監督?わたしたちが知ってる映画ある?」「ん〜、ドウカナ...」そして小さい声で「イキモデキナイ」と言った。ここで、ピンと来ないわたしの代わりに、HBギャラリースタッフの桑原さんが目を丸くして「観ました、観ました!」とちょっと興奮して言う。「怖いやつ?」「ちょっと怖いです」「その映画、有名?」「日本でもヒットしましたよ!」へえ〜。「すごいね、すごいね」監督はずっとニコニコ恥ずかしそう。「お名前なんて言うの?「ヤン・イクチュン」「じゃあ、ヤンさん芳名帳に名前書いてよ〜」「ナマエ、ニホンゴカケナイ」「いいよいいよ、日本語じゃなくて」というか、カタコトの日本語がカワイイ。

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字までカタコト!ん〜カワイイ!

 ヤンさんが、わたしの自画像を見て笑っている。

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「え?頭?」「ア、カオ、顔ソックリ」あはは。ありがとう。作品をスマホでぱちぱち撮って楽しんでくれている。

「そうだ、ヤンさん、一緒に記念写真撮ってもらってもいい?」「ア、ハイ」

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HBスタッフの桑原さんが後日ポライド風にして送ってくれた。

「霜田さん、監督に無職?って聞いてましたよね 笑」

 

 家に帰ってから「イキモデキナイ」を検索する。

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 ぎゃ〜!観てる、観てる。ずっと前に観て泣いた映画じゃないか!

制作、監督、脚本、編集、主演、全部ヤンさんじゃないか!

スタッフの桑原さんにメールする。「桑原さん、わたしも観てたよ!」

すると桑原さん「ヤンさんのインスタに霜田さんの絵が載ってます!」と画像を送ってくれる。ええ〜!

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早速コメントをいれる。Google翻訳した英語で。

ヤンさんもコメントしてくれる。

next time exhibition mo 楽しみにしてmas!!

きゃ!!!うれしいうれしい。いい1日だ。

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まるで別人。いいひと。

 

 そして、翌日。ギャラリーを少し遅く閉めて駅に向かっていると、コンビニからすっと出て来て早足で歩く人影が。あ!「ヤンさん!!」走って追いかけて声をかける。振り返るとヤンさんが「ア〜!アニハセヨ!」とにっこり笑う。

「ヤンさん、どこ行くの?」「アー、ワタシノデタサクヒンノ、パーティ」「あゝ荒野?」「ア、ハイ!」昨日はあれからヤンさんのことをチェックして、寺山修司原作の映画「あゝ荒野」で菅田将暉とダブル主演して、賞をとってるのを知っていた。「ヤンさん、観るね。あと、『息もできない』前に観てた!感動した!」「アリガトゴザイマス。アナタノ絵スキ」いや〜ん、うれしいうれしい。「ヤンさん、インスタにあげてくれてありがとう!」「フォロワーしゅくないよ」「これからどんどん増えるよ。ヤンさん大活躍してるもん」「ダイカツ?」「ん〜、有名、がんばってる」「イヤイヤ」ああ、なんて謙虚でかわいいのだ。「ヤンさん、握手して!」「ア、ハイ!」

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 個展も無事終わって、DVDで「あゝ荒野」を観た。前編後編合わせて5時間ぐらい。がんばって観た。菅田将暉もがんばっていたが、ヤンさん演じる「バリカン建二」が、すごくいい!これまた別人!いやあ、うまい。泣ける。ヤン・イクチュンはサイコーだ!すっかりファンになる。

 

 

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  この写真は、ヤンさんのインスタを見て来てくださった筋金入りのファンの女性が、「ハチワレ猫を抱いてるヤンさんの写真が、インスタにあったと見せてくれたスマホを撮影したもの。花子さんを抱き上げているみたい♡なんて。

 

 以上、ヤンさんにすっかりメロメロの、長い長いじまんブログでした。

失礼しました〜

 

「つめ切り戦争再び」

 たいへんおまたせしました。「つめ切り戦争再び」です。また始まっています。

過去のブログ

つめ切り戦争 - 花子さん、おばあさんになる

速報!つめ切り戦争終わる - 花子さん、おばあさんになる

 魔法のマスクで終わりを告げたはずの戦争が、なぜ再び起きているのか。それは、この覆面マスクの効果が、まったくなくなってしまったからなのである。効果がないどころか、これを装着すると唸って大暴れしてズレてかみつくのです。なんだかさらに凶暴になっています。マスクが嫌になったのかな?とすっぴんでトライ。

 

         

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 まあ、そうなりますわね。さて、どうしたものか。   f:id:hananeco:20180603230821j:plain

そうだ。前に群ようこさんのエッセイで読んだことがある。群さんちのハチワレ老猫のしいちゃんも、つめ切りを嫌がって困る。熟睡しているときに一本ずつ切っている、と書いておられた。(それでも無理で今は動物病院で切ってもらっているらしいけれど)よし、その作戦で行こう。

 

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しいちゃんのほうが何倍もおとなしい

(矢吹申彦さんの装画かわいい)

 

  そーっと寝ているところに近づく。それで目を開ける場合は断念する。何をしても起きないぐらい熟睡していないといけない。

 

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 まず一本をプチン!

 お、起きない!いいぞいいぞ、

 もう一本プチン!

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あ、起きちゃった...

退散退散。

翌日も、トライ。

一本プチン!

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あ、今日は一本で断念。。

ということを繰り返して、なんとかつめ切り戦争を回避している。

しかし、親指だけはやらせない。巻き爪になっているからだろう。

コマッタなあ。この闘いが完全に終わる日は来るのだろうか。

 

 

 

花子は生きているのか?

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 もちろん、生きております。ついでにわたしも生きております。

「いつまでこたつの絵のままでほったらかしておくのだ!」とクレームが入って来ましたので、更新することにしました。個展のお知らせをすると書いたまま、お知らせもせずに個展が始まり、慌ただしく終わり、終わったら仕事がたまっていて、さらにGWの前にやらなくちゃ!という雑事をやって、胃カメラ飲んだらポリープをふたつ取られて、お金は足りず眠気は覚めず。そして、気づいたら5月です。

 ああ、こうやってまた目の前のことだけ片付けて、今年も終わるのでしょう。

って、気が早い?いや、もう予想できます。毎年のことですもの。

 と、ひとまず、今日のところはこの辺で失礼します。

次回は「爪切り戦争再び」というお題で更新します。お楽しみに!

 

 

こたつと猫

 すっかりご無沙汰しております。寒いですねえ。インフルエンザになっていませんか?わたしは、インフルエンザになったことがないので、たぶんこの先も大丈夫だと自信をもっております。

 うちの花子さんの老化現象も横ばいで、本日みなさまにお伝えすることは特にないのですが、あまりに更新しないと忘れられてしまうぞと焦って、今、パソコンの前にいます。

 そんなわけで、この季節にぴったりな絵を載せてみます。

 

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 この絵には元ネタがあります。引用?ってやつです。

 鈴木春信「水仙花」です。

 

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パクリかよ〜!

違います。すっごい適当な本歌取りです。

 「水仙花」を「アネモネ」に変えましたがアネモネは晩春の季語なので、季節がズレちゃいます。ので、このこたつは「春炬燵」ということでおねがいします。

 

春...できるだけゆっくり来てほしい。春の個展の準備が進んでないのです。。

もう少し近くなったら、個展のお知らせしますね。よろしくお願いしまーす。

 

という訳で、

花子さんもわたしも元気は元気ですので、ご心配なきよう。