花子さん、おばあさんになる

人間年齢88歳の老いねこ日記

花子さんのまんが その2

  本が出たら、燃え尽き症候群になったのか、わたしは一気に不調になってしまった。人間不信になる出来事もあった。仕事も連載がどんどん終わって下り坂。明け方、目が覚めるともう眠れない。困った困った。

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 風濤社さんは「書店に営業に行こう!」と言っていた。「わたしもどこでも行きます!」とはりきっていた。サイン色紙をいくつか書いた。飾ってあるかなあ?と横浜の有隣堂に見に行くも、なかった。手のひらサイズの色紙は飾られることなく、本は書棚に一冊納まっていて、背表紙だけが赤くアピールしていた。それでも、行きつけの書店に自分の本があることに気分が高揚する。すぐその下で平積みになっている友人のコミックエッセイを手にとり、パラパラと立ち読みする。買おうかなと思ったけれど、なんだか気が滅入りそうなのでそっと元に戻して帰った。

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 風の便りで、風濤社さんの絵本「地獄」が急に注目されて取材に追われていると聞く。ああ、どうりで高橋社長からの営業の連絡が来ないわけだ。「地獄」という絵本は、約30年前に先代の社長である父上が出版したもので、千葉のお寺に所蔵されていた地獄絵でつくられている。注目のきっかけは東村アキコさんの育児ギャグマンガで取り上げられたことによるという。「わるいことするとこんな地獄が待っているぞ〜」と子どもを脅す古風な育児が人気らしい。(泣いちゃう子どもが続出らしいけれど、面白い絵でわたしは好きな絵本です)とにもかくにも、風濤社さんは今やお金のやりくりの心配無用で、増刷と発送に追われていて、「花子さん」どころではないようだった。ちょっと重たい荷物などと思っていた自分がはずかしい。

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  3月になり、春の気配もちらほら。あ〜いつまでもウツウツとしていてはいかん!大好きな金沢にでも行こう!気心知れた友だちを誘って遊びに行く。金沢には何かと縁があり、知り合いがけっこういるのだ。観光もせずに愚痴やぼやきを聞いてもらっていた。平日だったので携帯電話から、パソコン宛のメールをチェックしてみる。ん?なんだなんだ?なんかすごいメールが来てる・・・みたい。

                                                                  

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 それは読売新聞文化部のひとからのメールで、毎週水曜日掲載のポップスタイルという紙面のマンガを担当してもらえないか?という依頼だった。我が家は長年、読売新聞をとっていたので、そのコーナーのマンガも毎週読んでいた。「へ?」なんでわたしに?驚きの返信をすると、面白い答えが返ってきた。

 「地獄」が大ブレイクの風濤社さんへ取材へ行った折、社長から「最近うちで出た本です」と『おそ咲きの花子さん』をもらい、読んでくださったという。そして、マンガコーナーを一新しようと考えていたところに、ピン!と来たと言うのである。うわ〜、高橋社長ありがとう!

 金沢旅行から戻ってすぐに、文化部の市原さんと会う。メールの印象とは異なり、新聞記者らしからぬスタイリッシュなひとが待ち合わせ場所に立っていた。喫茶店へ移動し、イラストレーターのわたしに務まるか不安である旨を伝えるが、大丈夫ですよと言う。市原さんはポップスタイルの新編集長になったので、自分の責任で抜擢するとおっしゃる。大変なことになったなあ〜と思いながら「がんばります」と頭を下げた。

 連載の前の週に告知記事を載せるための顔写真を、喫茶店で撮らせてもらうかもしれないと聞いていた。ところが、カメラを首からぶら下げた市原さんは「似顔絵でいきますか」とたずねる。「あ、はい。そうします」とニッコリ答えながら、ちょっとずっこけた。

 

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 かくして、2012年5月2日水曜日、第1回目のマンガが掲載された。タイトルは「水よう日の花子さん」とした。連載は現在239回目を数える。(2/21現在)ひょえ〜。自分でもよく続いているなあとしみじみ驚く。

 

 それにしても、高橋社長のお父様が「地獄」を作らなかったら、わたしも風濤社さんもどうなっていたかわからない。80年代の校内暴力に胸を痛めて出版なさった「地獄」が30年後、崖っぷちのわたしを救ってくれました。本当に本当に有難い。完全な「たなぼた」だけど、棚の下にいなければぼた餅は受け取れない。運が良かった。

 現在「地獄」は累計40万部突破という。何がきっかけになるかわからない。世の中は驚くことばかりである。

 

なが〜い自己紹介、おわり。

 

 

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