花子さん、おばあさんになる

人間年齢100歳の老いねこ日記

デジカメの歴史

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 我が家に来たばかりの花子さん。2000年の冬。この写真で焦点が合っているのが花子ではなくて左のデジカメですが、でかいですよね。(若気のいたりでレゴのシールなんか貼ってカスタマイズしています)花子さんも小さかったけど、ずいぶん大きいなあ。たしかこれは二台目で、次にもう一台小さめのデジカメを買いました。今はもうデジカメを持っていない。iPhoneひとつで十分の時代、ブログもスマホから投稿できるし、進歩したなあ。で、デジカメがここにあるということは、この写真はフィルムのカメラで撮ってるんですね。なんでだろう?謎。テーブルのボロを隠すためのレースのビニールクロスがまたなんだか懐かしい。時代ですねえ。

 

 

ロマンスグレー

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 友だちの家のネコ、あんずちゃんがとてもかわいい。もっさりしたグレーの毛。ブリティッシュショートヘアという外国のニャンコなんだって。いい毛皮着てるねえ。

 一方我が花子さんは、白黒のハチワレ。トムキャット柄とも言うのかな。わたくし、この柄に弱いのです。それは小学生の頃、うちに住みついていた「みいこ」というおばあさん猫がとてもやさしくて、ひとりっ子で鍵っ子のわたしをなぐさめてくれた想い出があるからなのだけど、わたしはその幻想にとりつかれて、里親募集の集いをのぞいては、ハチワレ猫を探して歩いた。しかし、なかなか出会えない。あきらめて茶トラのオス猫を引きとろうと決めかけていたとき、隣のケージに入ったネコの担当のおばさまが、「こっちにもいるんですよ」と毛布を開けた。そこに寒そうに丸まったハチワレ猫、花子さんがじーっとにらんで居たのでした。

 

 

 

 

ラリってしまった

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 睡眠不足に悩んだわたしたちは、どうぶつ病院へ行ったついでに先生に相談してみた。どうやら花子さん、認知症になってしまったもよう。昼夜が逆転して、夜に徘徊して鳴いてるのだろうということだった。もともと、夜行性のネコが人間の生活に合わせているのだから、昼夜逆転というのはわたしたちの都合なのだけど。

 でも、まあお困りでしょうと、精神安定剤のような薬を処方してもらう。軽い薬なので寝る直前に飲ませれば、朝にはちょうど目が覚めるとのこと。ふ〜、助かった。

 

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 と、思いきや花子さん、薬を飲んだらフラフラになり、興奮してあちこち歩き回るではないか。腰が砕けたようになり、足がもつれて歩けないのに、歩こうとする。ほとんど見えてない目は酔っぱらいみたいにすわっている。もちろん、あちこちぶつかりまくりだ。なんとなく命の危機を感じたのか、突然ガツガツごはんを食べはじめた。いつもならお腹いっぱいになったところで、寝床へ行くのだけど、ぐるぐる歩き回る。さらに夜鳴きも止まらない。あ〜、もう、薬飲ませないほうがよかったよ。とほほ。

 かれこれ1時間ちかく、花子の後をついてまわっていだろうか。やがて、ぶつかりながらトイレに入り、そのままバタっと気を失ったように寝てしまった。いくら起こしても起きない。寝てくれたのは有難いが、よりによってトイレの中で、オシッコまみれで寝ることはないだろうに。

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 翌日、どうぶつ病院の先生に相談すると、薬が中途半端な効き方をしちゃったので、逆に興奮したのだろうとのことだった。もう少し強い薬にするか、量を増やすかー。

う〜ん。薬が効きすぎてグッタリするのも気の毒だしなあ。「ちょっと様子をみます」と言って帰ってきた。まだまだ夜鳴きの夜はつづくのだなあ。

 

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泣きたい!

 

 

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 目下、我が家の最大の悩みは花子さんの夜鳴きである。朝も昼も鳴いているのだけど、夜中の遠吠えがしんどい。声のボリュームがとても大きいのだ。聴力も弱っていて、自分の声の調整が出来ないのかもしれない。母などは毎晩のように頭の上で絶叫されて飛び起き、すっかり寝不足だ。わたしも、熟睡中にベッドの上に飛び乗られて「にゃああおおおおん」とやられ、心臓がドキーンとなった。

 生まれたての赤ん坊の世話をしているお母さん、お父さんが寝不足になる話はよく耳にするけれど、それも期限があることで、こちとら老いねこの夜鳴きは期限がない、というか、期限はおそらく天国へ行くころまで、だろうなあ。そう思って花子を見ると、まだまだ元気。静かな夜の訪れはさみしいけれど、ああ熟睡したい。

 

 

めがねデビュー

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 長い自己紹介が続いてしまいましたが、お待たせしました!今日はニャンニャンニャンのねこの日。このブログの本来の目的である花子さんのおばあさんっぷりを、やっと披露するところまで来ました。(実は今日を目標にあせってつくったブログです)

 

 人間もネコも老いのはじまりは「目」に現れるのではないだろうか。今の花子は「あれ?もしかして見えてない?」から「ありゃ〜、ほとんど見えてない?」に移行している。花子の目は、よくビー玉にみたいに光って、ホラー映画のようになる。このビー玉現象はコドモの頃からだったから、老眼とは関係ないだろうけど。夜中起きて徘徊しているところに遭遇すると、とても怖い。

 どれくらい見えてるのか、どれくらい見えていないのか、教えてくれないのでわからないけれど、壁に、ドアに、柱に、ゴミ箱に、ぶつかることがとても多くなった。でも、ゴン!と激しくぶつかる音がしても、大して痛そうにしないので、過剰に心配はしていない。ぶつりながらもうまい具合に歩いているなあと思って見ている。

                       

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 わたしが自分の視力を「あれ?」と疑いだしたのは、皮肉にも花子のマンガを描いているときだった。難しい漢字を間違えないように気合いを入れて書こうと、近づけば近づくほどにぼやけてうまく書けないのである。ああ、これが老眼というやつか。そう思うと切ないけれど、長年めがねに憧れていたわたしは、「ついにめがねデビューだ〜!」と気持ちを切り替えた。知り合いのおじさんは「100均でじゅ〜ぶんだよ〜」と言っていたが、同い年の女ともだちは「え〜、ちゃんとしたの買いなよ」と言う。

 

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 ある日、地下街を歩いていたらJINSがあった。友だちはここでつくったと言ってたな。どれどれと物色。とっかえひっかえ試してみて、これいいかも?と思うものがあった。それを手に取り店員さんにリーディンググラスってやつをつくろうかと考えていると相談した。視力検査をしてもらったら、まだ1.0の下の0.7ぐらいのレンズで良いと言われる。な〜んだ、まだ老眼って言うほどじゃないのか。

「老眼が進まないようにするには、どうしたらいいんでしょうねえ」と聞くと、「めがねをかけないことですね」と若い男性店員が平然と答える。「あー。じゃあ、今日はつくらないでいいっかな〜」と言うわたしを後ろから友だちがどついた。「老眼は進むことはあっても、良くはならない!」渋々、つくることを決心した。すると、「現在、お店の在庫の0.7のレンズが小さいものしかないので、フレームが限られます」とお店のはじっこに案内される。そこはキッズフレームコーナー。さんざん悩んで決めたさっきのフレームはなんだったんだ。

 そんなこんなで、わたしのファースト老眼鏡は、キッズフレーム。キッズなのに老人。なんだかちくはぐでおかしいけれど、まあ仕方ない。

あ、自分の老いの話になってしまったー。

 

 

花子さんのまんが その2

  本が出たら、燃え尽き症候群になったのか、わたしは一気に不調になってしまった。人間不信になる出来事もあった。仕事も連載がどんどん終わって下り坂。明け方、目が覚めるともう眠れない。困った困った。

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 風濤社さんは「書店に営業に行こう!」と言っていた。「わたしもどこでも行きます!」とはりきっていた。サイン色紙をいくつか書いた。飾ってあるかなあ?と横浜の有隣堂に見に行くも、なかった。手のひらサイズの色紙は飾られることなく、本は書棚に一冊納まっていて、背表紙だけが赤くアピールしていた。それでも、行きつけの書店に自分の本があることに気分が高揚する。すぐその下で平積みになっている友人のコミックエッセイを手にとり、パラパラと立ち読みする。買おうかなと思ったけれど、なんだか気が滅入りそうなのでそっと元に戻して帰った。

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 風の便りで、風濤社さんの絵本「地獄」が急に注目されて取材に追われていると聞く。ああ、どうりで高橋社長からの営業の連絡が来ないわけだ。「地獄」という絵本は、約30年前に先代の社長である父上が出版したもので、千葉のお寺に所蔵されていた地獄絵でつくられている。注目のきっかけは東村アキコさんの育児ギャグマンガで取り上げられたことによるという。「わるいことするとこんな地獄が待っているぞ〜」と子どもを脅す古風な育児が人気らしい。(泣いちゃう子どもが続出らしいけれど、面白い絵でわたしは好きな絵本です)とにもかくにも、風濤社さんは今やお金のやりくりの心配無用で、増刷と発送に追われていて、「花子さん」どころではないようだった。ちょっと重たい荷物などと思っていた自分がはずかしい。

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  3月になり、春の気配もちらほら。あ〜いつまでもウツウツとしていてはいかん!大好きな金沢にでも行こう!気心知れた友だちを誘って遊びに行く。金沢には何かと縁があり、知り合いがけっこういるのだ。観光もせずに愚痴やぼやきを聞いてもらっていた。平日だったので携帯電話から、パソコン宛のメールをチェックしてみる。ん?なんだなんだ?なんかすごいメールが来てる・・・みたい。

                                                                  

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 それは読売新聞文化部のひとからのメールで、毎週水曜日掲載のポップスタイルという紙面のマンガを担当してもらえないか?という依頼だった。我が家は長年、読売新聞をとっていたので、そのコーナーのマンガも毎週読んでいた。「へ?」なんでわたしに?驚きの返信をすると、面白い答えが返ってきた。

 「地獄」が大ブレイクの風濤社さんへ取材へ行った折、社長から「最近うちで出た本です」と『おそ咲きの花子さん』をもらい、読んでくださったという。そして、マンガコーナーを一新しようと考えていたところに、ピン!と来たと言うのである。うわ〜、高橋社長ありがとう!

 金沢旅行から戻ってすぐに、文化部の市原さんと会う。メールの印象とは異なり、新聞記者らしからぬスタイリッシュなひとが待ち合わせ場所に立っていた。喫茶店へ移動し、イラストレーターのわたしに務まるか不安である旨を伝えるが、大丈夫ですよと言う。市原さんはポップスタイルの新編集長になったので、自分の責任で抜擢するとおっしゃる。大変なことになったなあ〜と思いながら「がんばります」と頭を下げた。

 連載の前の週に告知記事を載せるための顔写真を、喫茶店で撮らせてもらうかもしれないと聞いていた。ところが、カメラを首からぶら下げた市原さんは「似顔絵でいきますか」とたずねる。「あ、はい。そうします」とニッコリ答えながら、ちょっとずっこけた。

 

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 かくして、2012年5月2日水曜日、第1回目のマンガが掲載された。タイトルは「水よう日の花子さん」とした。連載は現在239回目を数える。(2/21現在)ひょえ〜。自分でもよく続いているなあとしみじみ驚く。

 

 それにしても、高橋社長のお父様が「地獄」を作らなかったら、わたしも風濤社さんもどうなっていたかわからない。80年代の校内暴力に胸を痛めて出版なさった「地獄」が30年後、崖っぷちのわたしを救ってくれました。本当に本当に有難い。完全な「たなぼた」だけど、棚の下にいなければぼた餅は受け取れない。運が良かった。

 現在「地獄」は累計40万部突破という。何がきっかけになるかわからない。世の中は驚くことばかりである。

 

なが〜い自己紹介、おわり。

 

 

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花子さんのまんが その1

世の中は、今や犬派より猫派に席巻されており

ありとあらゆる場面で猫が幅を利かせている。

猫好きのわたしですら、ちょっとお腹いっぱい。

なーんて文句言いながらも、おもしろ猫映像などを

「お気に入り」に登録しては目尻を下げている。

猫って性格が色々で本当におかしい。それが

見た目にも現れていてバリエーションが豊富。

人気が出るのも仕方ない。

 

しかし、長年わたしをうっすらと悲しくさせていたことがある。

それはうちのネコは「ハズレ」なのではないか?ということ。

よそのお宅の猫を見る度に「いいなあ。かわいいなあ。」と

うらやましい気持ちがミルフィーユのように重なっていく。

一緒に居ていやされることもなく、不機嫌そうにジロリと

こちらを睨む目力のすごさ。すきあらば、嚙みつこうとする

凶暴な猫。「シャーッ!」と威嚇されない朝はない。

17年も一緒にいて、だ。

 

そんな花子をネタにマンガを描きだしたのは、2009年。

普段は雑誌のカットや、書籍などの仕事をしているけれど

コミックエッセイなんかも描けると、生活が安定するのではないだろうかと

目論んでいた頃に、Eテレで「趣味悠々  楳図かずおの4コマ漫画入門」

がはじまった。かわいい!たのしい!悶々と暮らしていたわたしは

愉快な楳図かずお先生の講座に勝手に入門することにする。

 そして、練習したマンガをブログにアップして遊んでいたら、

なんと知り合いの出版社社長が本にしてくれたのです。

 

はじめての本、真っ赤な表紙の「おそ咲きの花子さん」は

2011年の師走に刊行になった。3月の大地震の頃には

想像もできなかった。仮設住宅で新年を迎えようという方々も

いる中での、うれしい出来事。静かなきもちで喜びをかみしめた。

 

「霜田さん、花子で一発当てよう!」酔っ払った高橋社長は言った。

その頃の風濤社さんは、お金のやりくりが大変そうだった。

わたしも当てたいと思ったけれど、無理だろうなとも思っていて

ずっしり重たい荷物を一緒に持っているような気分になったのも

正直なところでした。

 

つづく

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